Ir al contenido principal

Entradas

Mostrando entradas de diciembre, 2023
血が飛ぶ。怒号が飛ぶ。魔法が飛ぶ。  ついでにヨハンの首が飛ぶ。  だだっ広い草原のいたるところで、見るだに恐ろしい殺し合いが繰り広げられている。  東軍、吸血鬼だけを揃えた少数精鋭。ムルナイト帝国軍。  西軍、刀剣の民による戦闘集団。ゲラ=アルカ共和国軍。 「閣下! 例の〝月桃姫〟の部隊が乗り込んできます! 迎え撃ちましょう!」  カオステルが叫んだ。叫ぶ間にもわけのわからん空間切断魔法で迫りくる敵どもをずたずたにしている。他の連中も血走った目で敵軍に突貫してバッタバッタと翦劉種たちを粉砕。粉砕された翦劉種の真っ赤な血液が噴水のように飛び散って草原を潤した。 「死ねやゴラァァァッ!」「ゲラ=アルカの鉄クズどもがぁぁぁッ!」「閣下にお褒めいただくのはこの俺だァァァ!」「おいてめえそれは俺の獲物だぞ!」「ふざけんな俺が先に見つけたんだよッ!」「横取りなんざ許さねえぞ死ねやあああ!」「ぎゃあああああああ!」  ………………。  …………。 「お喜びくださいコマリ様。敵がドン引きしております」 「喜べるわけないだろ!?」  私は魂の絶叫をあげた。  核領域である。つまり戦争である。野獣のように暴れ回る部下たちを眺めながらドキドキハラハラするのはいつものことだが、今回に限っては状況が違う。  既に第七部隊の半分は戦闘不能なのだった。  ベリウスは負傷して動けない。ヨハンはいつの間にか死んでた。残っている幹部は私のそばで獅子奮迅の働きをしているカオステルと、私のそばで謎のダンスを踊っているメラコンシーと、私のそばで暢気にお饅頭を食べているヴィルだけだった。 「それにしても此度の戦いは凄まじいですね。敵がすぐそこまで迫っています」 「他人事みたいに言いやがって! なんでおやつ食べてるんだよ!」 「アマツ殿からの贈り物が残っていたので……コマリ様も食べます?」 「食べてる場合じゃないだろ! 食べるけど!」  私は手渡されたお饅頭を引っ手繰って口に運んだ。あんこが入っていた。甘かった。この饅頭も、私の考えも、何もかも──  そのとき、前方から勢いよく飛んできた刀が私の足元にグサリと突き刺さった。  私は慌ててヴィルの背後に隠れながら敵軍の様子をうかがう。翦劉種たちは第七部隊の本陣目がけて死に物狂いで驀進している。下手をすればうちの連中が突破されてしまうかもしれない。怖い。 「くそ…